福山先輩、あのね。


卒業生を見送り、わたしたちは教室に戻った。それからホームルームの時間が終わっても、すぐに帰る気にはなれなかった。

グラウンドや学校の近くでは、まだたくさんの卒業生たちが、写真を撮ったり別れを惜しみ合っている。

そういうの見ると泣いちゃいそうだから、みんなが帰っていなくなるまで、陽子とふたりで教室でおしゃべりしていたんだ。


1時間ほど時間をつぶし、わたしたちは教室を出た。グラウンドにはもう卒業生の姿がほとんどなく、校内も静かだった。


「4月からはわたしたちも2年生かー。卒業まであっという間なんだろうね」


いつになくしみじみとした口調でつぶやいて、下駄箱からスニーカーを取り出す陽子。


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