墜落的トキシック


焦ってかじりつこうとしたそのとき、溶けたシロップが手首をつう、と伝う感触がした。



「花乃」



隣に座る侑吏くん。
私の名前を呼んで腰をかがめて。

シロップが伝った手首を掴まれた、かと思えば。




「ひぁ……っ!」



ひやりとした冷感と、ざらりとした感触が肌を柔らかくなぞった。

垂れたシロップを拭うように、な、な、な。




「舐め……っ」




手首にしっかりと残された舌の感触。
羞恥が熱に変わって顔に集中する。


せっかく涼んでいたのに台無しだ、と侑吏くんを睨むと。



「かわいー声も出せんじゃん」



悪びれずにぺろり、と舌を出す侑吏くん。
漂う色香に耐えきれずに視線をそらした。見ていられない。




「っ、ふざけないでっ!」

「ふざけてねーし。俺は本気」

「は……?」



思わず視線を侑吏くんに戻すと、彼の視線はまっすぐにこちらに向けられていた。
その視線が、妙に熱っぽくて焦げそうだ、と思う。



「あんま隙作んなよ。つけ込む気満々だから」

「意味わかんないんだけど……」

「別にわかんなくていい」




……今はね。




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