墜落的トキシック

噛みつく人






「なあんか、変わったよねー」



頬杖をつきながら、何の脈絡もなく呟いたのは麻美。

夏休みは瞬く間に明け、既に新学期が始まって二週間が過ぎようとしている。
そんな、とある昼休みのことだ。



「変わった……?」



何のことかわからず、きょとんと首を傾げると、麻美は教室のある一点に視線を送る。



「佐和くんよ」

「侑吏くん?……え、どの辺りが?」



麻美にならって、私も侑吏くんを見るけれど。
もぐもぐと唐揚げを頬張っている侑吏くんに、別段変わった様子はない。


夏休みを通して日に焼けたわけでも、髪型が変わったわけでもないし……きっと、髪の下に隠れている右耳のピアスも、だ。



「いつも通りじゃない?」



一通り侑吏くんをチェックし終えて、そう結論づけた私を麻美は「ばか」と小突いた。
結構痛いんだよ。容赦ないから。



「外見じゃないわよ。行動の話」

「行動?」

「二学期に入ってから、授業さぼらなくなったよね」



たしかに、そう言われてみれば。
侑吏くんといえば、最低でも2日に1回、多い日では1日に2回さぼるのがデフォルトのサボり魔だ。

だけど最近の侑吏くんは麻美の言う通りフル参加。
さぼっているのを見かけなくなった。



「それに、あれ以来めっきり女の相手しなくなったみたいだし」




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