墜落的トキシック


……痛い。
鈍い痛みが掴まれた手首に絡みついて。

でも、こんなハル、見たことがなくて、心配とか不安とかそちらの方が心を支配する。




「……手放したくねえな」




ぼそり、と低い声で呟いた。
乱れた口調が、ハルらしくない。全然。

それが不安を余計に煽った。




「ハル、あの……」



そっと声を掛けるとハルは顔を上げて。
柔らかいいつもの表情に、瞳にだけ苦しげな光を宿して。



「花乃」


「っ?」


「めちゃくちゃ勝手なこと言っていい?」




いつも通りの優しい声色に戻っている。
首を傾げたハルに頷くと。



「あいつ……佐和のこと、好きにならないでよ」

「っ、」




思わず息を呑んだ。

どうしてそんなこと言うの?



私が好きなのは、ハルなのに。
侑吏くんなんかじゃない。断じて。

終わりにしたのはハルの方、でしょ。




わからないことだらけで、聞き返したいことは山ほどあって。

だけど、ハルの瞳が切なげに揺れるのが見えて、こくりと頷いた。

迷う理由なんて、なかったはずだった。




────なら、どうして。


焦げつくような残像を意識的に頭から追い出して、今度は私がハルの手のひらをきゅっと包み込んだのだった。





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