墜落的トキシック


「血を見ても、雨の音を聞いても、もう何とも思わない。……ずっと前から、もう、大丈夫だったんだよ」

「……うそ」

「ほんと。花乃のおかげなんだよ。花乃がずっとそばにいてくれているうちに、平気になった。もうひとりでも大丈夫」




息をのむ。
ハルは今度は私をまっすぐに見つめて。




「だから、きっと俺がいなくても花乃は大丈夫」




魔法────呪いが解けていくような気がした。
はっと顔を上げると、ハルは寂しげに目尻を下げて。




「今度こそ、終わりにしよう」




足枷が外れる。
大丈夫だったんだ、きっと。


私たちはふたりぼっちなんかじゃない。


こくり、と頷くとハルは満足げに笑って。




「俺、ちょっと外の空気吸いにいくから。花乃も適当に帰っていいよ」



くるりと背中を向けて部屋を出ていこうとする。
その後ろ姿を見送っていたけれど。




「……ハルっ」




彼が扉に手をかける直前。
その名前を呼び止める。


驚いたようにハルが振り返った。





「あのね、私、ハルのこと」

「うん」




「……好きになりたかった」





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