墜落的トキシック


好きになりたかった、は好きになれない、と同義だ。
わかっている、私が酷なことを言っているってことくらい。



でもね。




ほんとうにほんとうにそう思っていたんだよ。


────好きになりたかった。
純粋な気持ちで、好きになりたかった。


私のことをこんなに想ってくれている、ハルのことを好きになりたかった。


ずっと、そう望んでいた。




「……うん、知ってた」

「っ、」



ああ、もう。



「……ハルは私のこと、ほんとうになんでもわかってるね」

「好きだったから。花乃のこと、ずっと好きだったから」



そんで、花乃も俺のこと。



「好きになればいいのにって思ってたよ」



上手い返しが思いつかなくて、目を泳がせると。



「……あ、一応言っとくけど。俺、謝らないよ」

「え?」

「勝手にキスしたのも、痕つけたのも、ごめんなんて、絶対言ってやらない」




悪びれずに言ってのける。

あと、もう一個、とハルが最後に付け足したのは。




「相手が誰であろうと、背中を押してやるほど優しい幼なじみにはなれないから」




目を見開いて固まる私を差し置いて、ハルは部屋を颯爽と出て行ってしまう。

ベッドの上にひとり取り残されて。



うう、とうなる羽目になった。
ハルはどこまでわかって言っているの。末恐ろしい。



『相手が誰であろうと』



もう一つの答えも、もう出ている。

あのね、私、本当は。




『好きだっつってんだよ』




嬉しかったんだ。

嬉しかったの、あの瞬間。
嬉しいと、思ってしまったの。



絶対、気づきたくなかった。
絶対、認めたくなかった。



だけど、もう駄目。降参だ。


どこにいても何をしても、考えてしまうくらい。
それくらい、私。




────侑吏くんが、好きだ。





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