墜落的トキシック
「……言う相手間違えてんじゃねーの」
ふるふると首を横に振る。
ううん、合ってる。合ってるんだよ。
「侑吏くんが、好きなの」
ハルへの気持ちが恋なんだと信じていたから気づかなかった。
ハルに向ける気持ちに全然似ていなかったから、恋だって気づけなかった。
だけど、これが。
今目の前にいる、この人に向ける気持ちが、きっと私の恋。
今なら、胸を張って言える。
口をぽかんと開けたまま固まっている侑吏くんを、じい、と見つめていると。
「はー……」
聞こえてきたのは、まさかのため息で。
ああ、やっぱりだめか。
呆れたかなあ、としょんぼり沈みかけたそのとき。
「遅い、待ちくたびれた」
「え、」
上がる口角。
どこか嬉しそうな声色。
息をのむ。
期待しても……いいの?
とくん、と胸の奥が鳴った。
「あの、えと……侑吏くん、は?」
確信が欲しくて、首をかしげると。
侑吏くんは、すうっと目を細めて。
「あ?……好きに決まってんだろうが」
侑吏くんの手から傘が滑り落ちて、道端に転がる。
激しい雨が直接降りかかってくるけれど、全然気にならない。