墜落的トキシック
侑吏くんが顔をぐっと近づけて。
唇と唇が触れる手前で、囁いた。
「キスしていい?」
「っ、いちいち聞かないで!」
甘い空気、恥ずかしさに耐えきれず顔をふいと背けるも、すぐに戻されてしまう。
「俺、合意の上でしかしないから」
ちゃんと答えて。
そう言われて、ああいつの日にかそんなことを言っていたなあ、なんて。
あのときは肯定する日が来るなんて思わなかった。
悔しいなあ、完全敗北。
なのに、なんでこんなに嬉しいの。
ゆっくり、こくんと頷くとすぐさま唇が重なった。
「……っ、ん」
あつい。
雨に濡れて、冷たくて。
なのに、顔も体もどこもかしこも熱くて、火照っている。
触れたところから、じわり、と広がっていく甘い熱。
「ふ、……ぅっ」
とろけて、溶けてしまいそうだ。
いやじゃない、だから、困るの。
息が苦しくなったタイミングで、ちゅ、と音を立てて離れた。
恥ずかしさと、それからいろんな感情がないまぜになって、一周まわって力が抜けて。
かくん、と膝が折れたけれど、すかさず侑吏くんが支えてくれた。
離れた体温が名残惜しい、なんてどうかしている。
悲しくなんか少しもないのに涙が、ぼろぼろとこぼれ落ちて。
それを隠そうともしない私に侑吏くんは意地悪く笑う。
「は、酷い顔」
そして、もう一度優しくキスが落ちてきた。