墜落的トキシック


琴葉(ことは)は、佐和のことが好きなんだよねっ。だから、替わってくれた方が嬉しいってわけ」





北村さんのお友達1号───もとい森川(もりかわ)さんがそう言って。


うんうん、と周りの数人も同調した。




ちなみに琴葉というのは北村さんの下の名前である。





「そう、なの。私、侑吏の隣の席が良くって、だから……」





頬を赤らめながらそう言った北村さん。

へえ、北村さんって佐和くんが好きなんだ。




男の趣味悪いんだな、ととっさに思ってしまったけれど口には出さずに留めておく。




「そういうことなら、是非。私も、むしろ誰かに替わってもらいたいくらいだったから」


「ほ、ほんとに……っ!? ありがとう!」




私が肯定の返事をすると、北村さんはぱああ、と目を輝かせた。

可愛さ5割増。




「琴葉、よかったじゃんっ」

「久住さんありがとねー!」





お友達1号、2号、3号も
北村さんを取り囲んで嬉しそう。


北村さんはそんなお友達たちに、もうっ、と可愛らしく頬を膨らませていた。





北村さんは好きな人────佐和くんの隣の席を得ることができて、

私は神席かつ麻美の近くの席を獲得し、さらになにより佐和くんを回避することができる。





まさに、利害の一致とはこのこと。





─────これにて一件落着、に思えたのだけれど。





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