【短完】甘い甘いチョコレートに、長年の想いを乗せて
自分で考え始めたくせして苦しくて、辛くて、息苦しくて考えることを辞めるように笑顔を貼り付けた。

『……、』

「変な顔すんなって」

クシャりと澪の頭を撫で、付いていたピックでブラウニーを口に運ぶ。

帰るにしては少し遅い時間だからだろうか、下駄箱の人気はそんなになかった。

良かった、澪が変な勘違いされたら困る。澪の好きな人が俺だなんて、澪の想い人に勘違いされたら困る。

澪には笑っていて欲しいから。泣いている姿なんて見たくないから。

「うん、美味いよ。」

『ほ、ほんと!?』

ああ。

なぁ神様。両思いなんて望まない。俺の想いは叶わなくたっていいから。だからさ、せめて。これだけくらいは勘違いするのを許してくれ。

澪な安心したように、花が綻んだように温かく笑った。

澪の頬が少し赤みを帯びている気がする。いや、澪の頬が赤みを帯びているのではない。夕日があたっている。ただ、それだけだ。
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