夕闇の時計店
思わず笑ってしまった。

「何だ」

「いえ、私も嬉しくて。クッキー持ってきて良かったです」

「そうだな。また……楽しみにしてる」

また。その言葉がものすごく嬉しかった。

次がある、この時間が終わってしまってもまた会える。

緋瀬さんと一緒に居られる。

「待っててくださいね。緋瀬さんが笑顔になるような美味しいもの作って持ってきます!」

「いや……何もなくても、来ればいい。滅多に客が来ない店だ。こうして話している時間は、悪くない」

「緋瀬さん……」

ずっと、迷惑になっていないか心配してきたが、そうでないとわかった今、胸がドキドキとうるさかった。

もう無理して理由を作る必要はない。

そうしなくても、緋瀬さんに会いに来れる。

「私で暇つぶしになるなら、いつでも来ます!」

高鳴る心が期待し過ぎないよう、そう言った。

暇つぶし程度の存在でいい。

今はまだ、一緒に過ごせる時間が一番大切で、幸せだ。
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