夕闇の時計店
「……っ」

スクールバッグを床に落として、駆け足で店内をぐるりと巡る。姿はない。

「勝手にお邪魔します!」

カウンターテーブルの奥へ行き、暖簾をくぐる。

「緋瀬さん、居ないんですか……?」

座敷と台所を伺うも、痕跡一つなかった。

廊下の奥へ視線が誘われる。

「外かな……」

奥に向かうにつれ暗くなる廊下を歩き出して、ドアの前に立ったとき、

ボーン……ボーン…………

「……!?」

大時計が時刻の変わりを伝えた。

慣れているはずなのに、静まり返っているせいかやけに大きく響いて聞こえて驚いた。

ドアを開いて足を踏み出す。

陽が沈みきる最後の一筋。眩いオレンジ色の光に目を瞑った。

「ん……」

ゆっくりと目を開く。
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