夕闇の時計店
薄暗い中に桜が舞っている庭……それは変わらないのに。

「広い……」

店を営んでいる区画に作られた小さな庭ではない。

歴史の教科書に出てくるような……例えば京都や鎌倉のお寺にあるような、立派な庭園。

「どういうこと……?」

立っている縁側も広く、庭を囲むように続いている。

ドアを振り返れば、そこは襖で。

「…………」

恐る恐る開けてみる。

「なんで……」

そこには緋瀬時計店の薄暗い廊下はなく、広々とした座敷だった。

どうしよう。

どうやって帰ったらいいの?

「ここどこ……」

スマートフォンの位置情報で確認しようと思い立った。

「スマホ、バッグの中だ……」

スクールバッグは胸騒ぎに焦って放ってきてしまって、ない。
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