夕闇の時計店
財布も薬も、困ったときに使えそうなものは何も……。

「う……」

途方に暮れて泣きそうになる。

薄暗いし、人の気配もないし。

確かに時計店からドアを開けて庭に出たはずなのに。なんで……。

夢なら早く覚めてほしい。

私は、緋瀬さんを探していただけ。会いたかっただけ。

「緋瀬さ……、っ」

突然、首を締められたように声が出なくなる。

なに……苦しい……!

圧迫感で呼吸もわずかにしかできない。

「げほっ……」

いつもの突発的な発作、だろうか。

でも、こんな短期間に続けて起きたことない…!

それに、私を殺そうとしているかのように喉を締めてくる感覚は……昔……

「い、や……」

目の前に火の海が広がる光景が浮かんで、消える。
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