夕闇の時計店
「……できました」

「あぁ。そのまま襟を合わせて……次は長襦袢」

薄い桜色の長襦袢に袖を通して半襟を合わせると、後ろから抱きしめられるような形で帯が結ばれる。

「…………」

「……衣月の髪はいい匂いがするな」

「なっ……」

思わず振り返って、緋瀬さんと目が合う。

近い……!

「!?」

ふいに唇が重ねられて、名残を残すようにゆっくり離れた。

「ぅ……」

「顔が真っ赤だ」

「ひ、緋瀬さんだって少し赤いです……!もうっ、早く着替え進めてください!」

前を向いて着付けの続きを促す。

「衣月が振り返ったからだ……それが可愛くてな」

「あー!またそういうこと言う……!」

「本当のことだ」
< 36 / 62 >

この作品をシェア

pagetop