夕闇の時計店
「……そうやってドキドキさせるといつか仕返ししますよ?」

「ふふっ、楽しみだな。さて、あとは着物と帯で終わりだ」

夜桜柄の着物を羽織って、桜色の帯と紅色の帯締めが巻かれた。

「この帯締め……緋瀬さんとお揃い?」

「よく気づいたな。衣月と同じ物を着けていたくて……嫌か?」

「全然っ!すっごく嬉しいです!」

選んでくれた夜桜の着物も、お揃いの帯締めも……ずっと大切にしよう……。

「よし、終わりだ」

「すごく……びしっとした気持ちになりますね」

この着物に相応しい女性でいたいと気持ちが引き締まった。

「思った通り似合う。綺麗だ、衣月」

「照れます……でも、ありがとう」

緋瀬さんを見上げて微笑む。

「……誰にも見せたくないな。だが、食事に行かないとな」

「緋瀬さんの街、たくさん案内してほしいです」

「あぁ。任せておけ」

差し出された手を握る。

離れないようにぎゅっ……と、どちらからともなく力が入った。
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