夕闇の時計店
「あっ、ごめんなさい!つい……」

緋瀬さんは片腕で顔を隠して俯いた。

「私、引いてないですよ!緋瀬さんのこと、嫌になってもないです!」

「そうか……」

「妻って言ってくれたの……嬉しかったです、すごく。緋瀬さんは言ったこと後悔してるんですか?」

バッと顔が上がり、艶めいた黒髪が揺れる。

「してるわけない!」

「ふふっ、良かった。じゃあ、緋瀬さんは私の夫ですね」

「っ……」

「あれ?顔が真っ赤じゃないですか?」

「今仕返しするのか……無理だ、嬉しすぎる」

緋瀬さんはとても幸せそうに笑った。

「今日は一日だったはずなのに、いろいろあり過ぎて……びっくりしたり、楽しかったり。でも一番思うのは、幸せな日だったなって」

「あぁ、俺もだ」

「…………今日、」

「一日……?」

二人して、目を合わせたところであることに気づき、固まった。
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