君に触れたい。
思わぬきっかけ
「逢坂夏希。」
「はい。」
出席確認の返事をした後、チラリと横目見る。
九条壮馬さんと隣になって一週間、一度も声を聞いていない。
「九条壮馬。」
「…。」
出席確認の時も今みたいに無言だし。
先生は居るのが確認できたら返事しなくても良いって言ってたし。
溜息を吐いて、そのまま机に伏せた。
ずっと観察しているが、彼は本当に口を開かない。
授業中、手を挙げて発言しない。
クラスメイトに話しかける様子もない。
先生とも話さない。
休み時間は本を読んでいるか、音楽を聴いているか。
もしくは、勉強をしているかの三択だ。
彼に話しかけようという人は誰も居ない。