転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
「母上は、父上にずいぶんつれないのだな」

「わ、リヒャルト様！」

　セスがいないというのに、リヒャルトはあまり気にしている様子もないらしい。ということは、セスはリヒャルトの命令でどこかに出かけているのかもしれなかった。

　皇帝と皇妃のやりとりを見ながら、彼は笑う。ヴィオラは彼を見上げて問いかけた。

「つれないですか？」

「ああ。だが、今までのことを考えたらそのくらいでちょうどいいだろう。母上は、父上より気にしている相手がすでにいるしな」

　皇帝より気にしている相手って、それはまずいんじゃないだろうか。

　ヴィオラが青ざめたら、喉の奥で笑ったリヒャルトは、ヴィオラの頬に手をかけた。

「君のことだよ、ヴィオラ。娘のように可愛いそうだ」

「それは……嬉しいです。ありがとうございます」

　この世界に来て、母には恵まれなかったけれど……アデリナ皇妃が喜んでくれたのなら、それでよかった。

　それと、あともう一つ。

（リヒャルト様も、いろいろな顔をするようになってくれた）

　最初に会った時は、無表情というかすべてを諦めているような表情を見せていた彼だけれど、今は違う。

　笑ってくれることがずいぶん増えた。今、改めてそれに気づいて、ヴィオラの胸が温かくなった。

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