転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
 お茶の用意がされるのを待ちながら、話題は昨日のことへと移っていた。

「セスがヴィオラを連れて行こうとしたのは――やはり、ティアンネ妃絡みだそうだ。父上は、ティアンネ妃を離宮にやると決めたから、その前にというつもりだったらしい」

 ティアンネ妃が送られる離宮は、ここからひと月ほども旅をした場所にあるらしい。帝国に征服された国の王城だった建物で、とても厳重に警備されているのだとか。

 一度入ったら出るのは難しいし、外部と連絡を取るのも難しくなる。ティアンネ妃を離縁しないのは、それでもトロネディア王国に配慮した結果なのだとか。

「お前のところの王族は、こちらが許すまで飼い殺し決定だ」と突きつけてもいるわけで、トロネディア王国内はティアンネ妃の扱いにつき、これから騒動になるのではないかとリヒャルトは言った。

「……そう。あの方も、務めはきちんと果たして――いえ、私が手を回せなかった分まできちんとやってくださっていたのに」

 残念だ、とアデリナ皇妃はため息をついた。

 彼女とは二十年以上、同じ男性の妻として肩を並べていたわけで、きっと思うところはいろいろあるのだろう。

 アデリナ皇妃が、この先、どんな道を選ぶのかはヴィオラにもわからないが、それでも複雑な気持ちにはなるはずだ。

 ヴィオラが拉致されかけた一件については、リンデルトの計画だったらしい。あのままヴィオラを『行方不明』とし、イローウェン王国に対する皇帝の心証を悪くする計画だったそうだ。

 思っていたより早くヴィオラの行方不明が発覚したため、セスは救出に加わざるを得なかったのだいう話だった。

 どうりでティアンネ妃が知らないとあの時声を上げていたわけだ。

 一点だけ。この国に来る時、国境で襲撃を受けた件についてはリンデルトもセスも否定している。

 ということは、単なる盗賊なのか――それとも、国境を越えたところでヴィオラを亡き者にしようとしたザーラの計画なのか。それについては、真相の究明は難しいだろうけれど、これ以上追及することもできないだろう、少なくともしばらくの間は。

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