転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
「私ね、子供の頃……ミナホ国の女の子と友達だったの」

 皇妃の話がどこに転がっていくかまったく予想できない。とっさにヴィオラはクッキーをとりあげ、それを齧ることで間を持たせようとした。

 かつてウルミナ王国には、ミナホ国の商人が出入りしていたて、皇妃と友人だったミナホ国の女の子は、その商人の娘だったそうだ。ミナホ国は銀がたくさん採れること、それから美しい絹の布を作る技術を持っていたことから、銀と絹をウルミナ王国に運んで売り、ウルミナ王国からは酒や宝石、鉄などを仕入れて帰っていたという。

「年に一度か二度しか会えなかったけれど、とても仲良しだったのよ」

 危険な海の旅に同行していたということは、とても勇気のある女の子だったんだろう。

 そんなことを思っていたら、アデリナ皇妃はヴィオラの前にケーキの皿を置いてくれた。

「彼女のご馳走してくれる珍しいお菓子が、私とても好きだったの。なんて言ったかしら……? パンケーキの生地の間に甘いクリームをはさんだお菓子。あれがとても好きだったわ」

(パンケーキでクリームをはさんだもの? それなら、この国でも作れると思うんだけど)

 今、ヴィオラの目の前に皇妃が置いてくれたカップケーキだって、上に甘いクリームがたっぷりかけられている。

「豆で作ったクリームなのですって。とても甘くて、珍しい味だったわ。こちらに来てから、厨房の料理人に頼んで再現してもらったこともあるんだけど……」

 皇妃はふっとため息をついた。どうやら、再現はうまくいかなかったみたいだ。

(餡のことだと思うんだけど、お豆を甘く煮るって……こちらではあまりやらないものね)

 この国でも豆は流通しているけれど、豆に甘い味付けをするという文化がない。

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