恋愛初心者です、お手柔らかに?
息が上がる私を見て、齋藤君は嬉しそうに微笑んだ。

「あとは家に帰ってからね」

「…っ、もう!」

軽くその胸を叩くと、齋藤君は真面目な顔になって言った。

「白石課長に俺たちの事言ったらダメか?」

「…それは…」

言いたい、みんなみ知ってもらいたい。
だけど、齋藤君の彼女が私なんて…非難されるのが目に見えてる。
今よりも嫌味が増えるかも…嫌味だけじゃなく嫌がらせされるかも…

「ごめん。気使うよな…もう少し様子見てからにしようか…」

「ごめんね…まだ言いたくない…かも」

「だよな。じゃ…白石課長には気をつけてくれる?」

「う、うん。今日のも途中から2人になっただけだから」

悩む私を見て、分かったのか齋藤君は、いいよと優しく私の頭を撫でてくれた。


「それと、なんか悩んでなかった?」

「え?」

「朝、俺の事避けたでしょ?」

「な、なんで?」

「俺の片思い歴、忘れた?絢の事、見てたから分かるよ」

「嘘…あ、でもそんな事ないし、大丈夫だから。それより、営業部戻ろう?遅くなると、書類が…」


慌ててその場から離れるように、私達は、廊下に誰もいない事を確認してから外に出た。


「絢、帰ったら話してよ?分かった?」

「分かった…」


ホント、どっちが年上なんだか…。
だけど、齋藤君の顔を見ていると、心配する事でもなかったのかも。と思い始めていた。


そして、お願いされていた仕事に取りかかった。









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