刹那で彼方









その時




『綾一!』




ふいに懐かしい記憶が頭に蘇る。


『良かったよね、部屋あって良かったよね』


あの、優しい声と暖かい笑顔。






そして






『私、もっと…』
















「幻覚でも…無理、だな」



俺は自嘲気味にそう呟くと、戻ろうとした足を止め、再びビルのそばに向かう。
そこには相も変わらず自殺を促す男が叫んでいて、俺は彼の肩を叩いた。
だがやつはこちらに全く反応せず、そのまま屋上の男に「はやく!」と叫ぶ。俺がもう一度叩くと、今度は上を見つめながら「片山、後にしてくれ。あと少しなんだ」と何故か見ず知らずの名前で説得されてしまった。
どうしようもなくなった俺は、仕方なく口を開き、なんとか意識をこちらに向けることにした。






「片山だろうが山田だろうが何だっていいが、自殺を待つわけにはいかない」

「あ?何言ってんだお前。つうか声が低くなってないか……

ぁぁぁ?」





最後は微妙な声を出しつつ、目の前の男は俺の顔を凝視する。そして後ろを振り返ると「結界は…あるよな…。」とまたもや意味不明なことを呟いてきょろきょろし始めた。








< 4 / 4 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

でたらめな愛のうた
蒼意/著

総文字数/2,028

恋愛(その他)4ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
笑う仮面は厚くきつく やつの顔に張り付いて その先に私は 真実を、見る ------------------------------- 多少流血等の表現が入っております。 苦手な方はご注意下さい。
狼少年にキスをした
蒼意/著

総文字数/2,566

恋愛(その他)5ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
私はいつも独りぼっち それが正しくて変わらないものだと そう思いながらも 願ってしまうことがあった

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop