カラフル
Q


奥瀬さんは一人暮らしの六十代の女性。
足が悪く、ときどき掃除と雑用を依頼されている。
っていっても、着るものも部屋もいつも小綺麗にしているので、だいたい毎回水回りを局所的に清掃している。


「篠上さん、そこ終わったら休憩取りましょうね」
「はい」


ガスレンジを磨いていたわたしは、油や調味料の汚れがなくなってピカピカになった部分を満足感いっぱいで見た。


「ドーナツがあるの。一緒に食べましょう」


再び声をかけられ、わたしは急いでスポンジと手を洗った。
布巾もしっかり除菌して干すと、心がスッキリ気持ちよくなった。

エプロンを外し、リビングに行くとテーブルにドーナツと紅茶が用意されていた。
奥瀬さんはニコニコ顔で、ソファに座っている。


「今日はほかの方が来てくださる予定だったけど、篠上さんでよかったわ。甘いものお好きよね?」
「はい、大好きです。ありがとうございます」


奥瀬さんはお母さんみたいに、わたしに食べたい種類を聞いて、イチゴのドーナツをお皿に取ってくれた。
わたしは絨毯に正座して、ドーナツをいただいた。
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