わたしを光へ。

加賀くんはそう言ってさっさと部屋から出ようとする。


「待って、花那をこのままに出来ない」


「美月!」


花那の側で縋り付く私を、冷ややかな目で見下ろす。


私が加賀くんに抱く感情は恐怖、それだけだった。


「ごめんね、怒ってないよ。でもはやく行きたいんだ」


今度は優しげに微笑んで言う。


恐怖で縛り付けて、甘やかして、何も言えなくする。


その効果は絶大だった。


後ろ髪を引かれながらも、私は加賀くんの後に付いていくしか無かった。


家を出る直前、玄関で一つ唇を落とされる。


それに満足そうな顔をした彼の後を追って、私たちは家を出た。

< 261 / 301 >

この作品をシェア

pagetop