彼のゴール、わたしの答え
「かかりつけの病院で、長年診てもらってるの。何をどう摘出したのかは、わたしが一番よく知ってる。最初から今みたいに達観してると思った? いろいろ説明聞いたに決まってるじゃん。わたしの事情に土足で入ってこないで」
「あ、いや、違う! そうじゃなくて、可能性を探ろうとかそういう話じゃなくて……」
顔を歪めて髪の毛をクシャッとつかむ。そういう仕草とかは好きなんだけどな。
「婦人科系の問題抱えるって大変なんだって改めて思ったんだよ。デリケートな話だから、いたわってあげてくださいって、先生からも言われたし。や、いたわれてなかったけど……」
「そうだね」
「とにかく、気持ちは変わらない。お前のことが好きだし、一緒にいたい」
「あのさ、そうはいってもまだ一日しか経ってないでしょ? 今は告白もして気持ちが盛り上がってる時期だから、そりゃ変わらないんじゃないかな。そんな理由ですぐ冷めるってのも、印象良くない感じするし」
「そんなこと!」
「それに、一緒にいる方法は、何も結婚だけじゃないでしょう? 仕事のパートナーとしてとか、友達としてとか」
「俺は、家族になりたいんだ。お前と、養子としていつかやってくる子と」
「あー……」
「だからけっ」
「ま、待って!」
「何を?」
「とにかく待って。時間をかけよう? 急ぐ問題じゃないでしょう。今日わたしから伝えたこと、検査結果、その他もろもろ、最低一晩、よく考えよう?」
不満げな表情でこちらを見てくる。
「昨日の今日だよ? グイグイ来るって、そりゃ言ってたけど! 言ってたけどさ! 早くことを進めようとしすぎ。そ、それにね、……それに……」
「なんだよ」
「それに、わたしはきっと十年後も変わらない。その自信がある。十年後も妊娠できないし、結婚せず一人でいるはず。あっ、里親にはなってるかもしれないけど」
そうなったら、転職しないといけないだろうな。
「だからさ、十年かけよう。十年後も、気持ちが変わらなかったら、結婚しよう」
「えっ……は?」
「うん、そうだよ。それがいいよ。だって、わたしには女性ならではの急がなきゃいけない理由がないもの。うん。それがいい」
「勝手に決めんなって、十年て!」
今までだってどんだけ待ったと……。
消え入るような呟きも聞こえたが、すごくいい案に思えた。