彼のゴール、わたしの答え
ブブッ
突然の音にビクッとしたが、テーブルに置いていたスマートフォンだった。
<今会計中。待ってろよ>
念押しのメッセージだ。バイブにビックリしたおかげで涙が止まってくれた。
ズズッと鼻をすすって、鏡を確認する。泣いたのは分かるだろうけど、薄化粧なこともあって、大変なことにはなってない。
一気に頭が冷えて、冷静になってきた。
ほぅっと息を吐きながら、戻ってきたらなんて伝えるかを決める。
うん、結果はどうあれ、わたしはこの道を行く。
「お待たせ。飯行くぞ」
後ろからポンッと肩を叩かれた。
「うん」
ニコニコしている。結果はどうだったんだろう。
「ねぇ、けっ」
「教えないから」
は?
「一緒に病院来いって言っといて……」
「結果がどうあれ、俺の気持ちは変わらなかったよ。俺はお前の一番近いところにいたい」
「そ……」
んなの、ずるくない?
「どうせ、どっちの結果だったとしても、お前の意見は変わらないだろ。結果が問題なければ妊娠できる人と結婚しろっていうだろうし、不妊傾向があったとしてもだから結婚しようってのはおかしい、とかいいそう」
「……………まぁ、確かに」
見透かされているようで、この人は何もわかっていない気もする。さっきまでのわたしは、グラグラしてたし、そこまで強くない。
「とにかく、飯食いいこうぜ。腹減ったわー。こっちは一回抜いてるし、疲れてんだよ」
「ぬっ!」
さらっと下ネタを出されて眉間にシワがよる。でも雰囲気を変えたかったんだろう。そういう人だ。彼は。
少し遅くなったので、近くにあったダイニングバーに入った。うすぼんやりした照明で、わたしの泣き顔も目立たない。きっと、それも考慮してくれたんだろう。
注文を終えると彼が話し出した。
「検査結果を聞いて、どう感じるかなってさ、それによって俺の中の答えを決めようって思ってた。でも、変化はなかったから。お前と結婚したいって気持ちに変わりはなかったよ」
「うん……」
「先生にな、聞いてみたんだ」
「何を?」
「お前の妊娠可能性、本当にゼロなのかって」
「はっ?」
「診察しないとわからないって言ってたけど、摘出っていっても何をどうしたかで……」
「それはさ、エゴじゃない?」
自分でもビックリするような低い声が出た。