無愛想な同期の甘やかな恋情
私の耳元でなにか囁きかけた穂高君を、私は身体を強張らせて遮った。
一瞬、怯んだように、彼の腕の力が緩む。
それを見逃さずに、私は彼の胸に両手を置いて、ドンと突き飛ばした。


穂高君は、背凭れのない椅子の上でバランスを崩し、やや慌てた様子で体勢を立て直している。
その隙に、私は勢いよく立ち上がった。


「わ、私っ……」


穂高君が、喉を仰け反らせて私を見上げている。
彼の視線に晒されて、私の心臓がドクンと大きく跳ね上がった。


どうして。どうして。どうして……!?
今になって、焦りと混乱が胸に広がり始める。


穂高君が、私を好きだなんて。
いったい、いつから?
だって彼は、私にはいつもつれなくて素っ気なくて……。
ずっと、嫌われてると思ってた。
だけど、はっきりと気持ちを告げられ、行動で示されてしまった今、『覚えてないフリ』『信じられない』は通用しない。


「ご、ごめんなさいっ! 私っ……」


謝罪は無意識に口を突いて出たものの、それ以上なにを言っていいのか、自分でもよくわからず。


「っ……」


結局なにも言えないまま彼に背を向け、バタバタと足音を立ててドアに走った。


「冴島っ……!」


穂高君が私を呼ぶ声にも、振り返れない。
私は、逃げるように、研究室から飛び出した。
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