無愛想な同期の甘やかな恋情
「ん?」


肩越しに振り返ってくれる穂高君から目線を逃がし、「正攻法って」と、さっきの彼の言葉を繰り返す。
会話の途中で止められたせいか、それがどうにも気になる。
そわそわする私に気付いたのか、穂高君は何度か瞬きをしてから、肩を竦めてクスッと笑った。


「堂々とオフィスで攻められる方法」

「は……はい!?」


いきなり、なんてとんでもないことを!
私は、ギョッとして目を剥いてしまった。
そんな私の思考回路を見透かしたのか、穂高君がぶぶっと豪快に吹き出す。


「夜のラボで、俺に襲いかかられるとでも思った?」

「ちょっ……変な冗談やめて!」

「先に想像したの、お前だろ?」


カアッと真っ赤に顔を染める私に呆れたように言って、穂高君は研究室に続くドアを開けた。
そのまま大股で突っ切って、廊下に出る。


「ほ、穂高君」


ドキドキする胸に手を当て、先を行く彼に声をかける。


「正攻法って言うのは、仕事で魅せるってこと」


穂高君は私に背を向けたまま、そう答えてくれた。


「え? 仕事?」


想像以上にまともな答えが意外で、私が聞き返した声は上擦ってしまう。


「冴島が間中さんに惚れたのも、仕事がきっかけだろ? だからこそ。さっきも言ったけど、お前が企画した商品は、たとえ不可能でも、全部俺が創り出してやる」

「……っ!」
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