一目惚れの彼女は人の妻
 でも、俊君は足が長いからか歩くのが速く、やっと追いついた時には、私はすっかり息が切れていた。

「待って?」

 と言って彼の腕を掴むと、俊君はくるっと私を振り向いた。私は、息が切れたせいで上下に揺れるEカップの胸を手で押さえた。恥ずかしいのと、俊君に触られないように。

「帰るの?」

「はい」

「用事あるの?」

「無いですけど?」

「じゃあ……飲み直さない?」

 と、俊君を二次会に誘ったのだけど、俊君の返事がない。

 もしかすると、さっき私が田中部長の誘いを断ったように、俊君もどうやって断ろうかと考えているのかもしれない。考えてみたら、俊君を誘いさえすれば、一緒に二次会に行けると思い込んでいた私って、バカみたい。

「嫌ならいいけど……」

 悲しくなってそう言ったら、

「嫌じゃないです。飲みましょう! 行きましょう!」

 と俊君は言い、私の腕を掴みつつ、

「ひゃっ」

 またしても胸を触られてしまった。手の甲でグイッて感じで。そう言えば、手の平だとアウトで、手の甲だとセーフ、つまり痴漢にはならないって聞いた事があるけど、本当なのかな。だとしたら、今のはセーフって事よね。

 としても、俊君の凄腕には、本当に関心しちゃう私だった。
< 49 / 100 >

この作品をシェア

pagetop