そして私は行間の貴方に恋をした
「お前笑い過ぎ。そんなおもろくもないだろ」

「やめてっ!これ以上笑わせないで!腹筋痛いから!」

笑い過ぎてヒーヒー言っている華月の手から免許証を取り返して財布にしまい、財布を鞄に放り込んだ。

「はぁ・・なんかお前幸せそうだな」

「お前じゃなくて華月。特別に呼び捨てでも許してあげる。私も太郎って呼ぶから」

「お前ね、もうちょい年長者に対して敬意をはらえよ、『さん』ぐらいつけろ」

「嫌、めんどくさいし、ウザいし。そう言えばさ、昨日居なかったよね?」

不機嫌そうな口調の割には、柔らかい表情で華月はそう言った。幼さは残るものの、十分に美人と言って差し支えないその顔は、似ても似つかないはずの『宿り木の彼女』に何故かダブって見えた。

「昨日雨降ってただろ。雨の日は来ないんだよ」

『誰が』とゆう主語を抜いたのは意図的だったのかもしれない。そんな事をする意味がないのはわかってはいたが。


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