見上げる空は、ただ蒼く
でも、どうして。

あの短剣はさっきまでただの
おもちゃの短剣だったのに。

あの短剣はプラスチック製で、
怪我をしないものだったはずだ。
だけど、さっきのナイフは...。

紛れもなく本物だった。

たくさんのクラスメートや
野次馬が私の周りに集まって
こようとしたけれど、
奏がさっと歩いていって
何事か話すと納得したみたいだった。

「怖い......。」

小さく呟いたとき、凜が
素早く駆け寄ってきて
私の前にしゃがみこんだ。

「大丈夫?」

優しそうな笑顔の凜に迷惑を
かけたくなくて、なんとか
作り笑顔を取り繕う。

「大丈夫、だよ。痛く、ない。」

「よかった。」

凜はほっとしたみたいで私の
方に手を伸ばしてきた。
もう少しで手がふれあう、
そんなとき。

「凜、その手で結乃に触るな。」

奏が突然、凜に向かって
厳しい声を発した。
私は訳がわからないまま
奏の方をじっとみつめる。

「奏、どういうことなの?」
< 44 / 273 >

この作品をシェア

pagetop