千年愛歌
ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは
十一月の中旬、俺たち二年生は京都へ修学旅行に行った。

待ちに待ったこの日に、二年生はみんなはしゃいでいる。

「海炎!!自由行動の時、一緒に回ろうぜ〜!!」

友達がバスの中でふざけながら言う。俺も「おお!竹刀買ってボコボコにしてやるぜ!」とふざけた。

修学旅行は二泊三日の旅だ。一日目は京都で金閣寺や清水寺を見て、二日目は奈良へ行き、三日目に帰るという計画だ。

清水寺の周辺は自由行動となっている。自由行動はみんなが一番楽しみにしていることだ。

友達と馬鹿なことを話してふざけていると、驚いた声と、大人びた声が聞こえてきた。

「ええ〜!かぐやちゃん、徒然草を暗記してるの!?」

「はい。修学旅行が終わった後に徒然草をすると先生から聞いたので、予習しているんです」

かぐやさんは、バスの中でずっと図書室で借りた徒然草を読んでいるようだ。

「徒然草は、吉田兼好が書いたとされる随筆です。清少納言の枕草子と、鴨長明の方丈記と並び、日本三大随筆の一つです」

かぐやさんは、隣の座席に座っている人に徒然草について教えている。本当に物知りだと俺は思った。
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