千年愛歌
そう言った後、俺は頭に浮かんだ歌を言う。

「これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも あふ坂の関」

かぐやさんが微笑む。

「その歌は……蝉丸の歌ですね」

「えっ!?蝉丸ってあの坊主めくりで取ったらみんなの持ってる札がもらえる人!?」

かぐやさんがクスクスと笑う。

「そうですよ。沖田くんっておもしろい方ですね。暗い気持ちが晴れてしまいました」

笑ってくれたことや、元気になってくれたことが嬉しくて、俺も微笑む。

胸の高鳴りと同時に、過去にもこんなことがあったような気がして、やっぱり不思議な気持ちになる。

保健室には、穏やかな空気が流れていた。
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