千年愛歌
そんなかぐやさんは、友達とあまり話すことなくいつも椅子に座って本を読んでいる。一年生の時は同じクラスではなかったけど、かぐやさんのファンの男子が、「本をいつも読んでて、その姿もきれいだなぁ」と言っていた。

かぐやさんがどんな本を読んでいるのかは、誰も知らない。手作りのカバーが掛けられていてわからないし、誰も知ろうとはしない。まるで透明な壁があるかのように、読書を楽しんでいるかぐやさんには誰も近づけないのだ。

そんなかぐやさんは、国語が得意だ。読むのもうまい。

「それじゃあ、村竹!読んでくれ!」

国語の時間、先生は微笑みながらかぐやさんを指名する。かぐやさんは、「はい」と小さく言って立ち上がった。さらりと髪が揺れる。

「春はあけぼの。やうやう白くなりゆく、山ぎはすこしあかりて、むらさきだちたる雲のほそくたなびきたる。夏は夜。月のころはさらなり、やみもなほ、ほたるの多く飛びちがひたる。また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光て行くもをかし。雨など降るもをかし」
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