千年愛歌
恋の歌だったのか……。俺は少し恥ずかしくなり、かぐやさんから顔を背けながら、「かぐやさんはどんな歌が好きなの?」と訊く。

「玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば 忍ぶることのよわりもぞする」

かぐやさんの顔は、切なさと憂いが混じった笑顔で、それが男子たちの視線を集めている。

この歌は…誰の歌だっけ?たしか、女性だった気がするんだけど…。

「その歌は誰が作ったの?意味は?」

訊ねる俺に、かぐやさんは笑みを浮かべたまま、「自分で調べてみてください」と言って再び本の世界へと行ってしまった。

友達からは、「どういう関係!?」と質問責めにあいながらも、俺は調べてみようと思った。

しかし残念ながら、図書室にあった百人一首に関する本は借りられていた。

それをとても悲しく感じる自分が不思議だった。



後日、百人一首の本が返却されていたのでページをめくる。かぐやさんが言っていた歌を作ったのは、式子内親王という人だった。

歌の意味は、私の命よ、絶えるのなら絶えてしまえ。このまま長く生きていれば、耐え忍ぶ力が弱って(心に秘めた恋が)しまいそうだから。
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