シュガーレス
「……優しかったね、ずっと」
「今日は、「優しくしないで」じゃないんだ」
 私の頬に触れる堤さんの指先が、いつもは冷たいのに今日はあったかい。
「私のこと、好きでしょ」
 聞くまでもなかったかな。ふっと吹き出す優しい笑顔を瞳に映してから目を閉じた。
 両手で頬を包まれ最初は触れるだけのキスも、すぐにお互いに手を伸ばして求め合う深いキスに変わる。
 長く、深く、激しく重なって、幾度となく繰り返されるキス。なんだか目頭が熱くなった。
「泣いてる?」
 息継ぎのために僅かに離した唇から、吐息に乗って発せられる言葉に身体が痺れる。
「嬉しくて」
 もう、切なさに胸を締め付けられる苦しい思いをすることはないのよね?
「今やっと、憧れの堤さんに手が届いた気がするよ」
 私を見つめる瞳が切ないほどに優しくて胸がきゅっとなったけど苦しくない。ときめきに胸が高鳴るよ。
「俺も。あからさまに好意を態度でしめしてるのに何食わぬ顔して通り過ぎる後輩を、やっと振り向かせた気がする」
「……どういうこと?」
 好意を態度で……? いつの話をしているの?
 聞きたいことがまた一つ増えてしまったけど。
「話はあとでいい?」
「うん」
 今は目と鼻の先にある唇にキスして欲しい。
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