シュガーレス
第3話 空虚
 必死に抑えようとする声だけがわずかに残る理性が働いた抵抗。でも声を押し殺そうとすればするほど、相手を煽動するらしい。
「なぁ、中でイクのと外でイクのとどっちがいい?」
「んっ……、そんな、分かってるくせに……やぁっ」
 私の反応を見ながら指の腹で秘裂をなぞり艶かしく問いかける。
 突起を擦りながら押して、滑るようにして敏感な場所へと浅く指を押し入れる。溢れてきた密が堤さんの指に絡み付いて、厭らしい水音が静まり返った暗い部屋に響く。
 もう限界だよ。早く、早く……
「中がいい……早く、つつみさ……が欲し……」 
「だったら早くその気にさせてみろよ。声出して、もっと感じてる顔を見せてみろよ」
「んっ……あ、あっ」
 仰向けになって横から抱き抱えられながら、指が私の中に潜り込んで中をかきみだす。跳ね上がる身体に一気に熱が帯びてくる。
「俺……実希子の声、好きなんだよ」
「あ……あっ……」
「知ってる? 会社でも時々おまえの乱れた姿思い出して抱きたい衝動にかられるんだよ。……押し殺した声も、汗で滲んだ肌も、この熱くてドロドロになった中も」
「……あぁっ!」
 指を増やし勢いを増してさらに奥へと刺激され、大きく身体が跳ね声が漏れる。
 さらに「みっけ」と自分が一番弱い場所をいとも簡単に探り当てられ電流のような刺激が身体を走り抜けた。
「可愛いよ、実希子……腰自分で動かしてみて」
「やっ……分かんな……んんっ」
 言葉の途中で唇を塞がれる。
 下腹部へ絶えず続く刺激と、口内を侵す舌が、私の舌を執拗に追いかけて逃がさないその息苦しさも合わさって意識が飛んでしまいそう。
 奥歯を噛みしめて目じりにはうっすら涙が滲む。
「いいね、その顔……入れたくなるよ」
 ベルトを外す音がする。
「あっ、あぁっ……!」
 一気に貫かれてたまらず目の前の首にしがみつく。
「きっつ。最初からあんま……締め付けんなよ」
「だめ……なの?」
「いいけど」
 口の端に皮肉な笑いを浮かべているのが見える。
 最初はゆっくりと腰を揺らす程度、次第に動きが速くなる。何度も奥を先端で突かれては言葉にならない上擦った声だけが部屋中に響く。
 たまらず目の前の胸にしがみついて、背中に手を回す。背中に回した手に感じる堤さんの体温はさっきとは比べ物にならないくらい熱かった。
 体中を掻き乱されるような感覚だけじゃない。体温も、汗ばむ肌も、弾む呼吸も、全部が合わさって私の中に大きな快感が生まれる。
 いくときは一緒。
 愛はもちろん、甘い囁きも合図も何もないのに示し合わせたかのように一緒に絶頂を迎える瞬間。快楽の絶頂に身を委ねながら心の片隅に小さな虚しさを覚えるのはいつものことだ。
< 6 / 38 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop