涙の数より空(キミ)が笑ってくれるなら。


「……それは青春だねぇ」

「入室許可書を渡すから来なさい。ま、まぁついでに前回と前々回の遅刻理由も詳しく聞かせてもらおうか」

「はーい」



ずるずると引きずられるように連行される涼太と、なにもしないで守られただけの自分。


なんか、…なんか…


なんか腹立つなぁーっ



「空も連れてってっ…!ツル…?…ツルピカ先生ーーっ」

「あ、あおえさん…?」



涼太が見たこともないくらい目を丸くして口をあんぐりと開けている。

素っ頓狂な顔。


人のいいところは見つけられるくせに、

自分のいいところを見つけられない。



「いま…いま私をなんと呼んだぁ…?」

「つる…つるつる!?…っだって名前わかんないんだもん!ツルカピ先生?!」

「鶴壁先生だぁーっ!」

「どっちでもいい!!」



他人を大切にするくせに、

自分を大切にできない。



「なんだその態度はぁぁーー」



怒鳴る先生を無視して、涼太を真っ直ぐ捉えた。



「空のが先に告白しようと思ってたしーーっ」



他人を優先して、

一人でぜんぶ背負い込む。

< 122 / 160 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop