涙の数より空(キミ)が笑ってくれるなら。


最初からこうすればよかったんだ。


カバンだけ持って席を立つ。

ひどく歪んだ視界のなか、ゆらりと足をおいたその時……

冷たいなにかが、指の先にふれた。


見なくても、それはすこし冷え性な人の手だと分かった。

振り返る前に手を引かれて、どこかにおでこをぶつける。

見上げると目が合って、歪んだ視界のなかで、その人は優しく、ほんとうに優しく笑った。



「なかった?俺も忘れちゃったー」

「50%だって」



……なんの、はなし


きっと周りの視線が集まって怖いのに、どこかほっとしていた。

遮るみたいに、視界の中でりょうたしか見えなかったから。




「傘、要るかな?」



甘やかされるように優しく問いかけられて、戸惑う。

わけわかんないのに、隠された意味は分かる気がして。

頷くと、自然に涙が流れた。



「俺もそう思う!せんせーーい!俺たち傘忘れたんで取りに帰ります!!」

「いこっ」



戸惑いながら一歩足を前に出すと、それを待っていたかのように手を引かれる。

騒がしい教室を飛び出して廊下を駆けた。

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