ただ愛してるだけ
リビングに来た慶人君は、私が寝ていたソファにゆっくりと座った。

「……迷惑だった?」

彼の声が、微かに震えていた。

「ううん。まさか、本当に来てくれるとは、思ってなかったから。」

時計を見ると、22時を超えていた。


「行くって言ったでしょ。」

「そうだけど。」

「なに?」

彼は立ち上がると、私の側に寄って来た。

「昨日の今日で、早いと……思わない?」

「別に。恋愛って、時間は関係ないと思うよ。」

近くにあった壁に、手を当てて私を見降ろす彼に、また胸がドキドキしてきた。


「それとも、焦ってるのかな、俺。」

「えっ?」

「ずっと好きだったから、このチャンス、逃したくないって。」

すると彼の唇が落ちて来て、重なる前に止まった。
< 26 / 57 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop