ただ愛してるだけ
「はい。」

『おはよう、夕陽。今日はお寝坊さんね。」

そう。

その相手は、律子さんだ。

「急いで支度するから、そこで待っていて。」

『ちょっと、夕陽。開けなさい!』


開けなさいって言われても、こっちだって、開けられない秘密があるのよ!

「ちょっと、夕陽!」

律子さんが、ドアをドンドン叩いている。

ここはひとまず開けないと、近所迷惑になるかも。

私はリビングを見ながら、慶人君がいないのを確認すると、そーっと玄関を開けた。

「おはよう。あら、昨日と同じ服ね。」

「ははは。そのまま寝ちゃって……シャワー浴びる時間ある?」

「仕方ないわね。早く済ませて。」

「はーい。」

まさか女優が、シャワーも浴びずに現場に向かうなんて、許せなかったのだろう。
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