本命チョコ達に込められた想い
決戦日。この日に備えて昨日は心を込めてハート型のガトーショコラを作った。そして他の人よりちょっとだけ特別なラッピングをし、魔法をかけた。
「私の気持ちが届きますように。」
「気をつけ、礼、ありがとうございました。」
クラスメイトがザワザワと騒ぎ出す。
「はいっ、チョコ!!」
「わー!ありがとう!! はい!これ、私からも!!」
女子達が一斉にチョコを交換し始める。私は既に友チョコ・義理チョコは配ってあったので、手の中にはあと一つしか残っていない。人混みの中にいるであろう彼を必死に探す。すると…見つけた!もう教室から出ようとしていた。私は追いかける。
威勢よく追いかけたのはいいものの私は大事なこと忘れていた。それは私が生粋の臆病者だということ。つまり今どういう状況かと言うと、私と彼の間には約10メートルほどの距離がある。声をかけようと口を開くが、喉の奥がキュッと締まって声が出せない。ただマフラーに顔をうずめ、彼の背中を見つめることしか出来ない。こんな事をしている内にだんだん自信がなくなってきた。もし告白中に噛んじゃったら、もしチョコをもらってくれなかったら、もし振られて無視されたら。たくさんの「もし」が私の中で積み重なる。この「もし」達が私を負の連鎖へと誘い込む。とその時、不意に昨日の亜美の言葉か頭の中に流れてきた。
“舞香は後悔しちゃダメだよ。”
この言葉がぐるぐる回る。後悔。私の中の、後悔。
「あっ!」
私は思わず声を出した。私にとっての後悔、それは私の中に沢山ある「もし」ではなく、告白をしないことだ。思いを伝えなければ何も始まらない。今から未来のことを考えたってしょうがない。好きだって伝えないと!そう思った瞬間私は走り出した。
「あのっ!」
私はありったけの勇気を振り絞って声を掛けた。すると彼がゆっくりとこちらを振り返る。まるでこうなることが分かっていたみたいに。
「えっと…そのー、えー…」
やばい。頭の中が真っ白で考えたセリフもどこかへ消え去ってしまった。このあとなんて言えばいいの…?そこで見かねた彼が助け船を出してくれた。
「一緒に帰る?」
あぁ、夢みたいだ。私のすぐ横にはずっと思い続けていた彼がいる。少し左を向けば、彼の横顔が目の前に来るのだ。しかし、彼がこっちを見ようとすると、私はパッと視線をそらしてしまう。怖いのだ。目が合ったらもっと好きになってしまう。今より好きになったら私、この恋を終わらせることは出来るの…
「どうしたの?」
彼が心配そうにこちらを見る。
「なんでもないよ…」
私はまっすぐ前をむいたまま答える。
ダメだ。もうこれ以上爆弾を抱えることは出来ない。もう言ってしまおうか。心の中でカウントダウンを始める。5、4、3、2、1、
「好きです!」
「えっ…」
ってそっちからじゃないだろぉ〜!!!!何の脈略もなしで告白とかありえないだろぉ〜!!!!と自分の中で突っ込ん方がない。とりあえず気を取り直して、
「あっ、えっと…ごめん。順番間違えたけど、チョコレート。」
「あっ、ありがとう!凄く嬉しい!」
本当に嬉しそうな顔をして喜ぶ。この笑顔を見るだけでなんでも出来そうだ。
「それで、もう一回言うけど…好きです。私と付き合ってください。」
言えた。今度はしっかり目を見つめて。
途端に彼の顔が朱色に染まる。こんな反応もするんだ。すると今までの饒舌が嘘みたいに、モゴモゴし始めた。
「あのさっ!俺も舞香に渡したいものがあって!」
やっと彼からちゃんとした言葉が聞けた。しかし聞けた言葉は想定外のことで今度は私がモゴモゴする番だった。てっきりごめんとか、嬉しいけどということを言うものだと思っていたのだ。彼の手には可愛いラッピングの小さな箱がのってある。再び視線が合う。
「これ、俺からもチョコレート。逆チョコってやつ?それで…俺と…………」
あれから5年がたった。お互い違う大学に進んだが、今でも順調に交際を続けている。そして…
「「はいっ!」」
今年も私たちは本命チョコを交換する。
「私の気持ちが届きますように。」
「気をつけ、礼、ありがとうございました。」
クラスメイトがザワザワと騒ぎ出す。
「はいっ、チョコ!!」
「わー!ありがとう!! はい!これ、私からも!!」
女子達が一斉にチョコを交換し始める。私は既に友チョコ・義理チョコは配ってあったので、手の中にはあと一つしか残っていない。人混みの中にいるであろう彼を必死に探す。すると…見つけた!もう教室から出ようとしていた。私は追いかける。
威勢よく追いかけたのはいいものの私は大事なこと忘れていた。それは私が生粋の臆病者だということ。つまり今どういう状況かと言うと、私と彼の間には約10メートルほどの距離がある。声をかけようと口を開くが、喉の奥がキュッと締まって声が出せない。ただマフラーに顔をうずめ、彼の背中を見つめることしか出来ない。こんな事をしている内にだんだん自信がなくなってきた。もし告白中に噛んじゃったら、もしチョコをもらってくれなかったら、もし振られて無視されたら。たくさんの「もし」が私の中で積み重なる。この「もし」達が私を負の連鎖へと誘い込む。とその時、不意に昨日の亜美の言葉か頭の中に流れてきた。
“舞香は後悔しちゃダメだよ。”
この言葉がぐるぐる回る。後悔。私の中の、後悔。
「あっ!」
私は思わず声を出した。私にとっての後悔、それは私の中に沢山ある「もし」ではなく、告白をしないことだ。思いを伝えなければ何も始まらない。今から未来のことを考えたってしょうがない。好きだって伝えないと!そう思った瞬間私は走り出した。
「あのっ!」
私はありったけの勇気を振り絞って声を掛けた。すると彼がゆっくりとこちらを振り返る。まるでこうなることが分かっていたみたいに。
「えっと…そのー、えー…」
やばい。頭の中が真っ白で考えたセリフもどこかへ消え去ってしまった。このあとなんて言えばいいの…?そこで見かねた彼が助け船を出してくれた。
「一緒に帰る?」
あぁ、夢みたいだ。私のすぐ横にはずっと思い続けていた彼がいる。少し左を向けば、彼の横顔が目の前に来るのだ。しかし、彼がこっちを見ようとすると、私はパッと視線をそらしてしまう。怖いのだ。目が合ったらもっと好きになってしまう。今より好きになったら私、この恋を終わらせることは出来るの…
「どうしたの?」
彼が心配そうにこちらを見る。
「なんでもないよ…」
私はまっすぐ前をむいたまま答える。
ダメだ。もうこれ以上爆弾を抱えることは出来ない。もう言ってしまおうか。心の中でカウントダウンを始める。5、4、3、2、1、
「好きです!」
「えっ…」
ってそっちからじゃないだろぉ〜!!!!何の脈略もなしで告白とかありえないだろぉ〜!!!!と自分の中で突っ込ん方がない。とりあえず気を取り直して、
「あっ、えっと…ごめん。順番間違えたけど、チョコレート。」
「あっ、ありがとう!凄く嬉しい!」
本当に嬉しそうな顔をして喜ぶ。この笑顔を見るだけでなんでも出来そうだ。
「それで、もう一回言うけど…好きです。私と付き合ってください。」
言えた。今度はしっかり目を見つめて。
途端に彼の顔が朱色に染まる。こんな反応もするんだ。すると今までの饒舌が嘘みたいに、モゴモゴし始めた。
「あのさっ!俺も舞香に渡したいものがあって!」
やっと彼からちゃんとした言葉が聞けた。しかし聞けた言葉は想定外のことで今度は私がモゴモゴする番だった。てっきりごめんとか、嬉しいけどということを言うものだと思っていたのだ。彼の手には可愛いラッピングの小さな箱がのってある。再び視線が合う。
「これ、俺からもチョコレート。逆チョコってやつ?それで…俺と…………」
あれから5年がたった。お互い違う大学に進んだが、今でも順調に交際を続けている。そして…
「「はいっ!」」
今年も私たちは本命チョコを交換する。