クズでも恋がしたい
*



ふふふなんて、満足そうに笑う姿は、見ずともわかる。

酔っぱらいの相手でもするのが趣味?

それとも、するりするりと懐に漬け込んで、お金ぶんどるとかそんなかんじ?ボブの心の疑心感はまだまだ晴れない。


じとっと、少し見るのを恐れていた相手の顔を見ると、少年のようにほちゃっとした顔である。



かわいい。


不覚にもボブはそんなこと考えてしまったのだ。


「なあに?なんかついてる?」


男にも関わらず柔らかい声を出して自分のほっぺを触るのはもはや確信犯なのではないだろうか。


でもそんな考えはほんの数秒で否定されるもので、


これからまた新しい本物の恋が訪れるなんてフラグはやっぱり、ぼっきりと折られてしまうのが現実ってもんである。



誰が想像するんだろう。



「お姉さんて、くそビッチ?」



こんなにも可愛い笑顔で、軽々と聞き捨てならないセリフを吐く男のことを。


私はあまりの衝撃に、ぐわんぐわんと脳内が揺れるもそれは妄想であり、はっきりくっきり、聞き逃すなんてことはなかったのである。



「はあ、」



初対面の男に、くそビッチ呼ばわりされため息しか吐けなかった私は、心のどこかで自覚なんてものがあったのかもしれない。

そりゃそうか、

こんな真夜中に公園でぼーっと座ってれば、声をかけられるのを待ってるようにも見えたのかもしれない。

じゃあ、私は今日この人と燃え上がるのかって?

たぶん、それもないんじゃないかな。



「なんか、声かけてくださいオーラがぷんぷんで面白そうだったから声かけちゃった」




思い出すと笑えるな、なんて悪気も無く腹を抱えるこの男が私を持ち帰ろうなんて考えてるとは思えない。




だけど、問題はそこじゃないような気もする。

初対面に非常識な言葉をふっかけられたことより、
相も変わらず爆笑という言葉がお似合いなほど笑う男の姿より、


男の目に私が映ってないように見えることの方が何故か恐ろしくて、




背筋がぞっとした。







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