恋する耳たぶ

「……本当ですかね」
「もう、真凡ちゃんってば……どうしてそんなこと言うの?」

おかしなことばかり言う真凡ちゃんに首を傾げると、真凡ちゃんはその様子さえ不満だと言うように鼻を鳴らした。

「いや、だって……なんか、おかしいじゃないですか、その男」
「……そうかな?」
「まあ、紬未さんもけっこうおかしいので。わかんないかもしれないですけどね」
「うん……それはそうかもしれないけど。人に言われると結構ショックなものだよ?」

全く悪びれる様子もなく、お弁当の肉巻きを口に入れて、真凡ちゃんは言う。

「だって、付き合ってもいないのに、結婚とか言い出して、女をその気にさせるなんて……典型的な結婚詐欺師の手口じゃないですか」
「えっ、そうなの?!」

愕然とする私に、真凡ちゃんは、更に言う。

「もうちょっとしたら、その男、きっと、相談があるとか言い出しますよ……」


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