恋する耳たぶ

「相談?匡さんが私に?」

何か、匡さんの力になれるなら嬉しいけれど。

「……相談て、なんの?」

『田舎に住んでる父親が病気で……』

声を低くして、男性っぽい声色を作って真凡ちゃんは言う。

「えっ、匡さんのお父さん、病気なの?!」

『手術するのにお金が必要なんだけど……』

「大変!すぐに用意しなきゃ!!」

前のめりになった私の鼻先に、ずい、と指をつきつけて、真凡ちゃんが言う。

「はい、紬未さん、アウト!」
「へ?」

大きくため息をつき、お弁当箱を持ち上げた真凡ちゃんは、ごはんをもぐもぐして、呆れたように言う。

「なんで、そこでバッグ手にしちゃうんですか。なに言ってんの、コイツって、怪しむとこでしょ、そこは」
「だって、お父さんが病気なんて大変じゃない」
「そうですね。本当なら大変なことですよ。本当ならね」
「え……本当じゃないの?」
「当然です。むしろ、そういう可能性の方が高いですよ」


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