恋する耳たぶ
そんな時間をくれる彼女に惹かれるのは、当然のなりゆきだったのかもしれない。
「……運命、か」
ついさっきまで一緒にいた上司が随分と昔に言った言葉をつぶやくと、紬未ちゃんが、え?と首をかしげた。
そんな紬未ちゃんに、なんでもない、と首を振ってみせて。
「あのさ」
俺はちょっと前のめりになってた姿勢を正し、紬未ちゃんと正面から目を合わせた。
「ちゃんと、話そう?」
他人と向き合ったことなんて、ほとんどない俺だけど、彼女のことなら何でも知りたい。
とりあえずは、その涙の理由を。
「どうしていいかわからないかもしれないけど、俺に話してほしいんだ」
言いながら、自分の気持ちを言葉にするって、すごく勇気のいることなんだな、と、改めて思った。
「そうやって、2人でやっていこうよ……これから、はさ」
もう離すつもりなんか欠片もない小さな指を、キュッと握る。
この指先から、俺の気持ちが伝わるように、想いをこめて。
…………俺の弱点は、くすぐりなんかじゃなく、紬未ちゃんなのかもしれない。