血で愛してるの文字を書く
_梨花side
私が彼女と出会った日。
多分私は壊れてしまったのだろう。
誰にでも平等に、深入りせず接してきた私は、
この世で唯一私の自傷行為を知っていて
尚且つそんな私を受け入れてくれた彼女、村田雪乃に
自分でも驚く程に惹かれていってしまったのだ。
学校へ通えなくなった私は、
昼間はカフェで、夕方からは彼女の家へ
毎日毎日入り浸っている。
彼女しかすがれる人がいないのだ。
彼女だけが私の味方。彼女だけは私を捨てない。
…本当に?やだ、やだやだやだやだ、捨てられたらどうしよう。
そんな事を何度も考えてしまう自分自身が気持ち悪くて、
思わず嘔吐してしまった。
「このままじゃダメ…」
もしこのまま彼女に依存してしまっては、
彼女に捨てられた時、私は死んでしまうだろう。
距離を置こう。そう考えた。
彼女に今日は行けないとメッセージを入れる。
会えない、と考えるとぽろぽろと涙が溢れる。
膨大する気持ちが抑えられず、
引き出しから錆びたカッターナイフを取り出した。
もう光を反射しない程に薄汚れた刃を
手首に押し当てる。
その時だった。
「何してるの梨花!!!」
急に扉が開いたかと思うと、仕事中のはずの母が声を荒らげながら入ってきた。
「最近学校に行っていないってどういう事なの…?
それに今、何をしようとしてたの…?」
そう、母は呟いた。
きっと母は二重人格だ。私に暴力を振るう母の姿はそこにはなく、
ただ、娘を思い嘆く普通の母がいた。
「全部ママのせいでしょ…」
そう言って、力なく笑う。
「全部ママのせいって…どういう事なの…?」
そんな戯言をぬかす母に、私の中の線が
プツンと切れた音がした。
「…何も。何も覚えてないの?」
そう言うと母は困惑した表情を浮かべる。
そして、さらに狂言を続ける。
「何の話をしているの…?それにその眼帯とか痣、どうしたの…?いじめ…?」
_あぁ。
私は右手に握りしめていた刃を
目の前の怪物に向ける。怪物は悲鳴をあげ、
取り乱している。
その姿があまりにも滑稽で、
私は笑いを抑えることができなかった。
「××?!×××××!!!××!!××××?」
何かを叫んでいるようだ。
うるさい。黙らせよう。
私はカッターナイフを離し、床に落ちたビニール袋を拾いあげる。
そして怪物を一瞥する。怯えた表情だ。
私は怪物の口内に、先程の自分の嘔吐物を包み込んだビニール袋を押し込んだ。
そしてそれを吐き出さないように
怪物の口を抑えつける。
「×××!!××××!」
怪物はまだ静かにならない。困ったものだ。
「うるさい」
そう言って、静かにならない悪い怪物の頭を
何度も何度も何度も何度も何度もぶつ。
頭では静かにならないので、次は顔を殴ってみる。
怪物の鼻から出た赤い液体が、私の手に付着する。
不快だ。気持ち悪さをかき消すために、
何度も何度も殴り続けた。
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