人魚姫の涙
静まり返った部屋に響く紗羅の声。

それらはゆっくりと、暗闇の中に溶けていった。


「本当の、話?」


ドクドクと心臓が早鐘のように鳴る。

聞いてはいけない。

何かが終わる。

心の中で誰かが囁いた気がした。


「運命だよ、成也」

「運命?」

「そう。私達の運命の話」


小さく頷いた紗羅は、何かの使命にかられたように再びゆっくりと口を開いた。


人魚姫の様に気高く美しい姫の口から零れる言葉。

ある時はセイレーンの様に美しく。

ある時は刃物の様に鋭く。

俺の心を掻き乱す。
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