人魚姫の涙
その声を聞いて、俺の方にゆっくりと顔を向けた母さん。
いつも凛としている母さん。
弱音を吐いている所なんて、一度も見た事がない。
強く、気高い、俺の母さん。
ずっと2人で助け合って生きてきた。
でも、それは偽りだったのか?
造られたものだったのか?
そう思うと、訳の分からない感情に押し潰されそうだった。
しばらく、静まりかえる部屋。
少しの時間が、ものすごく長く感じる。
互いに何かを推し量っている様に、誰も何も話さなかった。
しかし――。
「全部、話すわ――いいでしょう?」
小さく息を吐いた母さんが、徐にドアの方を振り返ってそう言った。
俺と紗羅は訳が分からないといった様子で閉ざされていたドアの方に視線を向ける。
すると、母さんの声に反応するように、ゆっくりとドアが開いた。
そして、そこに現れた人を見て、俺は目を疑った。
「いつかは話さなければいけない事だったんだ」
低い、重低音の声が部屋に響いた。
目の前に現れた人を見て、再び目を見開いた。
「久しぶりだね、成也君――。ただいま、紗羅」
ドアの向こうにいたのは、18年ぶりに会う紗羅の父親だった。